この議論には世界中の膵臓領域を専門とする医師があつまり、広い視野を取り入れながら慢性膵炎の定義について論議されました。上野真実(サッカー)は熊本出身!消化器病態学分野 教授 下瀬川徹先生にお話を伺いました。欧州で階段を駆け上がるのがいかに険しいのかを、自分の体験から痛切に感じています。進行すると膵外分泌・ しかし、すでにお話したような古典的な慢性膵炎の定義では、相当進行した慢性膵炎しか捉えられず、そうした進行した段階ではいくら治療介入を行ってもなかなか患者さんのQOL(生活の質)や生命予後の改善にまで至りませんでした。慢性膵炎は、初期の自覚症状があらわれにくいといわれています。 この定義は、慢性膵炎の発症機序まで考え、それぞれの臨床経過全体を診断していけるような基準をコンセプトとしてつくられています。
この定義の特徴といえるのは、慢性膵炎を一種の「症候群(さまざまな病態のあつまり)」と捉えようとしている点です。 しかしどの定義も「かなり進行した末期の慢性膵炎」を診断する基準である可能性が問題視されてきました。本邦で初めて慢性膵炎の定義が提唱されたのは1971年のことですが、当時の慢性膵炎診断基準は、異なる成因によりもたらされる共通した完成像、つまり「かなり進行した末期の慢性膵炎」を診断するための基準でした。現在の日本において、「慢性膵炎」の定義は2009年に改訂された早期慢性膵炎の診断基準を含む慢性膵炎臨床診断基準に記載されています。日本膵臓学会、日本消化器病学会、厚労省難治性膵疾患調査研究班の 3 団体は、2009年に「慢性膵炎臨床診断基準」の改訂を行い、そのなかで慢性膵炎の早期病変とその診断について記載しました。 そうしたなか発表されたのが、さきほどもお話した慢性膵炎臨床診断基準2009です。
そのため発表された診断基準によって本当に早期の病変を捉えることができるのかは、これから多くの患者さんを診察し、その経過を追って、どのような患者さんが従来考えられてきた慢性膵炎へと進行していくのかを確認しなければなりません。 そうしたなか近年では、慢性膵炎の定義をより柔軟に捉え、早期の段階で慢性膵炎をみつけることで「進行した慢性膵炎」になる前に治療を進めていこうという考え方が広まってきています。早期慢性膵炎を診断するための診断基準が発表されましたが、実際にこうした基準を用いることで早期慢性膵炎の診断が正確に行われるのかどうか、そして早期に治療介入できた場合に慢性膵炎の予後は改善されるのかは、今後の課題になると思います。早期に患者さんを見つけ出し、より早い段階で適切に治療を行うことができれば、「末期の慢性膵炎」へ進行してしまうのを未然に予防できる可能性があります。 そのため早期の診断が難しく、比較的進行した状態で診断される方も少なくありません。進行した慢性膵炎は「治らない慢性膵炎」と考えられます。
慢性膵炎では、みぞおちから背中にかけての腹痛、吐き気、体重低下、糖尿病の発症といった症状がみられます。 Mechanistic Definitionでは、慢性膵炎を発症する人はもともとの遺伝的素因や環境的要因などさまざまな要素をもっており、そうした方々が膵実質の障害といったストレスをきっかけとして、線維化を伴う持続する炎症(慢性膵炎)を発症するのだと考えています。 しかし近年では、急性膵炎を繰り返す患者さんや、軽い腹痛や、腹部不定愁訴(ふていしゅうそ:明確な原因がないにもかかわらず不調があること)などを訴える患者さんのなかに、比較的早い段階の慢性膵炎の方が存在しているのではないかと考えられるようになってきました。 そこまでうまくいくことは滅多にないと強調しておきたいです。 また早期治療介入の効果についても、今後多くの対象患者さんのデータを前向きに追跡する必要があるでしょう。世界レベルでの議論を経てつくられたMechanistic Definitionが発表されることで、今後、慢性膵炎という疾患をもう少しダイナミックに捉える傾向になってくるのではないかと期待しています。
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